HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

アンドラーシュ・シフ演奏会

昨日11月5日(火)シフの演奏会を聴いてきました(2019.11/5 19:00~@東京文化会館)。シフの演奏は録音ではいろいろ聴いていたのですが、直かに聴くのは初めてです。今回は『カペラ・アンドレア・バルカ』という小編成のオーケストラの手勢を引き連れての来日公演でした。『アンドラーシュ』という名前を聞くと、いつも思い出すのが、ブダペストにある『アンドラーシュ大通り』です。高台のブダ地区を下って鎖橋を渡り国会議事堂のあるペシュト地区に入り真直ぐ進むと左手には、オペラハウスがあり、さらに真直ぐ歩き右手を少し入った処に『リスト・フェレンツ音楽大学(リスト音楽院)』があります。もうしばらく行くと幅員の相当広い通りが目に入ります。これがかっての名君に因んで名付けられたという『アンドラ-シュ大通り』です。ずっと先の突き当たりには左手に国立西洋美術館(クラナッハ フリュ-ゲル ベラスケス ドラクロワ等多数所蔵 )を臨む『英雄広場』が鎮座しています。懐かしい記憶を思い出してくれる名前なのです(通りに面したレストランで食べた料理の写真などもある筈なので、今度探して置きますね)。ハンガリー生まれのシフさん(顔付きから東洋系の遺伝子が入っているとも推定されますが?)もこの名誉ある名前に恥じず、世界的ピアニストとなった訳です(ところで奥様は日本人なのですね)。
 さて演奏の方は①バッハ作曲『音楽の捧げ物』②モーツァルト作曲『ジュピター』③ベートーヴェン作曲ピアノ協奏曲『皇帝』の3曲でした。①はニコレのフルートの演奏や管楽器アンサンブルの録音をよく聴いていたものでしたが、今回は絃楽器が中心のフーガでした。かぶり付きの席しかとれなかったので、舞台が高くて、奥の器楽奏者が良く見えなかったのですが、管編成・弦楽5部は、2管編成の8型の変形ではなかろうかと思われる。第1Vnは8人いたけれど、その他の弦は通常より何人か欠けていたかも知れません。管楽器は更に少なく、各2名程度。でも演奏が始まると、弦のアンサンブルは綺麗な澄んだ音を出し、管がタイミング良くアクセントを付けて、結構な迫力。''6声のリチエルカーレ’’のみの演奏だったので、10分弱の短い演奏でした。指揮者兼ピアノ奏者のシフは、指揮台に立って特に身振り手振りはせず、目で奏者を追って指揮をしていました。あたかも練習で指導した成果を確かめるように。次の②はモーツァルトの良く知られた曲。楽団員の皆さんの経歴を見ると一流の経験を有する方ばかりなので、しかも、よく演奏される曲のせいか、とても気持ちの良い調べが流れ出し、夢うつつで聴いていました。今度はシフも曲に合わせて体を震わせながら腕を振り指揮をしていました。 この曲は四つの楽章からなる結構長い曲なのですね。モーツァルトを堪能出来ました。

 休憩の後の後半は③の曲が演奏されました。私のお目当ての曲でした。60歳台も半ばを過ぎたシフさんが、どの様なベートーベンを聴かせて呉れるのか興味深々でした。演奏を聴いて先ず気が付くことは、音が柔らかいこと。しかしそれが決して軟弱に流れず、ffの大きい音をたてても失われない。微妙なppの表現も鍵盤を太い指でかすめるが如き運指で音を出し、心で弾いている。音楽とはこういうものだというお手本を見る思いでした。既に名人の域に達していますね。オケの演奏も音量が大き過ぎず小さ過ぎず、ピアノを引き立てかつ自分達の存在感もしっかり主張するという、ピアニストにとってぴったりのものです。将にお誂えのオケでした。ベートーベンの皇帝を弾き終わると会場は万雷の拍手と歓声に包まれ、それに応えて、アンコール曲を3曲も演奏されました。何れもベートーベンです。(1)ピアノ協奏曲第2番第2楽章(2)ピアノ協奏曲第1番第3楽章(3)ピアノソナタ第12番『葬送』より第1楽章。もう言う言葉は残っていません。「天のピアノは言うことなし。」