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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

2019年竹澤恭子ヴァイオリン・リサイタル

昨年聴きに行った竹澤さんのコンサートの記録です。

  先週末2019年10月5日(土)竹澤恭子ヴァイオリン・リサイタルを聴いてきました(15h~@川口リリア音楽ホール)。リリアに行くのは、昨年4月以来です。あの時は忘れもせぬ、ピリスの日本最終ピアノ公演を聴き洩らし残念がっていた時、翌日に最終の追加公演があることを知り、主催者に電話してやっとチケットを一つ譲って頂きリリアに駆け付けたのでした。竹澤さんのお名前は依然から存じあげていたのですが、これまで演奏会がほとんどなかったか、あっても気が付かなかったのか、とにかく一度も聴いたことの無い演奏家でした。 実は来週、奏楽堂で漆原朝子さん達のVn演奏会を聴く予定になっているのですが、竹澤さん、漆原さんお二方は1982年第51回日本音楽コンクールで覇を競った間柄でその時は竹澤さんが優勝しました(参考まで、この年のコンク-ルではその後活躍が目立つ錚々たる顔ぶれの方々が上位入賞しています。ピアノ部門の仲道さん、若林さん、声楽部門の釜洞さん、番場さんetc.)それから月日は流れ四十年弱、漆原さんは、芸大教授に大成され、竹澤さんはパリを拠点として目覚ましい活躍をされている国際派ヴァイオリニストに成長されました。そうした方々の演奏会を相次いで聴ける又とない良い機会なのでぜひ聴きに行きたいと思ったのでした。
 曲目は前半が、①クララ・シューマン『三つのロマンスOp.22』②ブラームス『ヴァイオリンソナタ第1番ト長調Op.78「雨の歌」』。後半が③ショーソン『詩曲Op.25』④クライスラー『小品集』から6曲でした。ピアノ伴奏は、津田裕也さん。紺碧色のドレスに身を包んだ竹澤さんが登壇すると会場から静かな拍手が鳴り響きました。リリアには幾つかのホールがあり、今回は、大きなメインホールではなく約600の座席を有する音楽ホールでしたが、木質材が壁と床に貼られ音響効果は良さそう、舞台後方には小さいながらも、立派なパイプオルガンが鎮座しています。開演直前の座席は、前方は一杯で後ろに行くに従い空席がチラホラ、後部座席の2/7位は完全に空いていました。比較的音の小さいVnリサイタルなので、その箇所は未使用にしたのかも知れません。①の曲はa.アンダンテ・モルトb.アレグレットc.情熱的に速く の三つの曲から成り、クララの秘めた情念が伝わって来る様な感じの曲でした。登壇した奏者はにこやかな笑顔だったものが、演奏開始と同時に厳しい表情に変わり、あたかも精魂を込めて音を紡ぎ出している、音の生みの苦しみに耐えながら最適な演奏を探っているかの様子で、これは次のブラームスの時も、ショーソンの時も同じ様子でした。その結果、素晴らしい調べが泉から溢れ出るが如き印象を受けました。またピッチカートの挿入が効果的だった。それにしても使用されているストバリは何と複雑で良い音が出るのでしょう。同じ音を長く伸ばす時、同じ音階で音色が、例えれば黄色にも赤にも青にも微妙に変わるのです。将に七変化の音色。その音を引き出す演奏者の腕前はもう達人の域に達していると言って良いでしょう。次曲②ブラームスのソナタでは重音奏法、ピッチカート奏法、ハーモニックス奏法等々のパーツが各処に嵌め込められていて技術的にかなり難しい曲だと思いますが、竹沢さんはそれを慎重に、だが軽々と弾きこなしていました。この曲では伴奏の津田裕也さんのピアノが特に綺麗に聴こえた。特に第2楽章イントロの独奏など。第3楽章の冒頭は所謂「雨の歌」、自作曲の歌曲のメロディを用いています。ややしんみりしたメロディが流れた。ヴァイオリンで聴くとかなり違った印象のメロディですね。ともかく全体的に一番強く感じたことは、ブラームスはこの曲を「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」としたかったのでは?と思いたくなる程、ピアノの活躍が目立ったということでした。
 休憩を挟んで後半の最初はショーソンの代表作『詩曲』。確かに名人が弾くと益々名曲に聴こえます。表情豊かな演奏で何も言う事が無い素晴らしさです。
 次のクライスラー小品集は、さすがヴァイオリンの名手が編曲しただけあってどれもがこの楽器の特性を生かした曲でした。シャミナード原作曲の『スペイン風セレナーデ』では前記のハーモニックス奏法等の技巧が冴えていました。一番の収穫はドヴォルザーク原曲「スラブ幻想曲」がとてもいい曲だったこと。初めて聴いた曲でしたが、新たな発見といった感じ。それにしてもスペイン関係の曲が多かった。お好みなのでしょうね。ブラームスが得意とは聞いていますが。
 まとめますと、今回の演奏は、最初から最後までブレずに心を込めて会場一杯に音の造形を描き出した、経験とキャリアの為せる技だと思いました。
 尚、アンコールが二曲演奏され、①ロンドンデリーの歌、②タイスの冥想曲(マスネ)②の演奏後は会場の万雷の拍手、ブラボーなどの歓声も飛び交っていた。
益々来週(2019.10/31)の藝大の先生方の演奏会が楽しみになって来ました。