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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

藝大構内奏楽堂で催された演奏会

10月は結構多く音楽会に行ったので、それを遡って以下に記します。

 10月14日体育の日、藝大構内奏楽堂で催された演奏会を聴いて来ました。(『弦楽シリーズ2019-----フランス室内楽の名曲を探して ― 名手ドンスク・カンと日本の仲間たち』)随分長いサブタイトルのついたコンサートですが、要するに、藝大の招聘教授であるドンスク・カン氏を中心とした藝大の先生方グループが、フランス音楽の室内楽の魅力を求めて演奏したということです。

出演者は、Vn:ドンスク・カン招聘教授(韓国人)、漆原朝子教授、玉井菜採教授、野口千代光准教授。Pf:坂井千春准教授、津田裕也准教授。Va:川崎和徳教授、Vc:河野文昭教授、中木健二准教授。以上All GeiDai Teachers しかも招聘教授と河野教授以外はすべて藝大の卒業生です。ドンスク・カンさんは米国大学(韓国歴は?)河野さんは京都芸大卒(この大学はチェロの実力者を輩出していますね。)の様です。他大学から教授になるということはかなり難しく、相当な実力と実績を持つということを意味します。これは音大に限らず例えば第17代東大総長の茅誠司さんは東北大卒、元東京大学大学院法学政治学研究科教授蒲島 郁夫さん(現熊本県知事)はハーバード出。

 さてこの日の演奏曲目は、先ず①ミヨー(Darius Milhau  d)作曲『2つのヴァイオリンのための二重奏曲作品258』(Vn:ドンスク・カン・漆原 朝子)。仏エクス・アン・プロヴァンス(異説あり)生まれ(1892年)のミヨーは第二次大戦をはさみ米国のカレッジで、戦後はパリ音楽院でも教鞭をとった作曲家・指揮者で豊かなユダヤ人一族出身でした。亡くなったのは1974年、生誕地に埋葬。死後数か月後に同族出身の芸能・音楽評論家フランシーヌ・ブロッホが追悼文「ダリウス・ミヨーへのオマージュ(ソルボンヌ所蔵冊子)」を発表。次いでながら『ブロッホ』の姓にはユダヤ人出身で名を残した有名人が多くいて、エルネスト・ブロッホ(作曲家)エルンスト・ブロッホ(哲学者)フェリックス・ブロッホ(ノーベル賞物理学者)等々。遠く遡れば皆さん血が繋がっているのでしょうかね?それにしてもエクス・アン・プロヴァンスはとてもいい所ですよ。広いミラボー通りの目抜き通りに太いプラタナスの街路樹が並び、木陰が心地良い。私は非常に気に入りました(パリよりも?)。ただミストラルが冷たいかな。

大分話がそれてしまったので戻しますと、ミヨーのデュオ演奏に登壇した二人は女性と男性でした。女性はすぐに漆原さんと分かったのですが、男性の方はステージを歩いて来た時、‘あれ、ピアノ伴奏かな?そんなことない、奏者変更かな?’と一瞬思いましたが、すぐ‘あ!ドンスク・カンさんは男だったのだ’と認識したのです。と言いますのも、事前に見た演奏会資料の写真を見た限り、貫禄ある女性のヴァイオリニストとばかり思っていたからです。氏名からも判別出来ませんでした。この曲は漆原さんご姉妹が録音収録しているソフトもありますし、パリのキラキラする雰囲気の曲のイメージからも女性デュオとばかり思っていたのです。事前に藝大の先生の性別も判読出来なかったとは何と認識不足、お恥ずかしい。このミヨーの曲自体は6~7分程度の非常に短い軽妙な曲でした。今回この音楽会に来た理由の一つが、一週間ほど前に竹沢恭子さんの演奏を堪能した余波で、漆原朝子さんの演奏を初めて直かにじっくり聴きたいということがあったのですが、比較的硬質の調べのDUOはアッと間に終わってしまいました。後で考えると、この演奏は今回の演奏会の開演宣言ですね、演奏会をスタートするという。

 続いての演奏は、②ロパルツ(Joseph-Guy Ropartz)作曲『チェロとピアノのためのソナタ第1 番ト短調』(Vc:中木 健二、Pf:津田 裕也)配布されたプログラムによれば、この曲はコルトーにより初演された様です。ロバルツはパリ音楽院に入学、有名なマスネ教授のクラスに入るも、当時のフランスでドビシー等の印象派音楽と二大潮流であった“フランキスト(フランク派)”の一員に加わった、即ち当時の流れとしてあったフランクの弟子となって作曲を学んだといいます。ショーソンも同様ですね。マスネは作曲家として『マノン』『ウエテル』『タイス』などいい曲を沢山作曲していますが、教授としての資質はどうだったのでしょうか?フランクに弟子を皆なとられてしまったのでしょうか?確かに大学は専門を追求する(研究する)立場と先生としての(教育する)立場の二面性がありますから両立は非常に大変なのでしょうね。

 ロパルツもこのチェロ曲も日本では有名ではないのでしょう。あまり演奏されないのでは?調べたらロバルツはトランペット曲やピアノ曲がよく演奏され、また長大なシンフョニーが1番から4番まで?ある様です。日本では演奏されないのかな?あれば聴きに行きたいな。

 今回の曲のピアノを演奏した津田さんは10/5(土)にリリアで聴いた竹沢さんのリサイタルでもピアノ伴奏しました。その時大変綺麗な音を出す奏者だと感じていたのですが今回はどうでしょう。チェロの中木さんは初めてです。冒頭から最後まで目をつむり、時としてチェロを傾けながら体を反らせながら曲に没頭して演奏していた。第2楽章ではピアノと交互に主題を朗々と奏でていて大変良く聞こえました。3楽章の強いピッツィカートはコントラバスの如し。欲を言えば全体的にもう少し艶のある音が欲しいかな。ピアノの津田さんは、たまに首を横に振る他は上半身をきちんと姿勢良くして淡々と弾いていました。高音でハットする様な綺麗な音を出す時もあり、指の運びも滑らかでしたが(鍵盤がよく見言える席でした)、演奏が単調になるきらいがあるので要注意ですね。今後の飛躍が期待されます。お二方ともまだまだ(こじんまり⇒大型への)伸びしろのある演奏家だと思いました。曲の全体印象は現代音楽を予感する兆しを感じました。

 休憩を挟んで後半は③ショーソン作曲『コンセール 二長調 作品21』(独奏Vn:ドンスク・カン、独奏Pf:坂井 千春、4重奏第1Vn:玉井 菜採、第2Vn:野口 千代光、Va:川崎和憲、Vc:河野文昭)この曲は40分近くの大曲で、ピアノとヴァイオリンのDUOというより、ピアノ独奏とヴァイオリン独奏の掛け合いに弦楽4重奏が協奏曲の様に絡んで来る珍しい形式の曲です。第1楽章ではピアノの低音から高音まで激しく上下する独奏と4重奏の掛け合いの部分が印象的でした。ヴァイオリン独奏は、力強くもありやや荒々しさもある力のこもった演奏でしたが、最後の高音はかすかに鳴らす弱音でピアノと4重奏の消え入る音とピッタリ息が合って終了しました。第2楽章では穏やかな調べでピアノもヴァイオリンもとてもきれいな音を出していました。Pf奏者はちょくちょくVn奏者の方を振り向き合わせていました。Vn奏者は演奏にますます没頭し、力強くでも次第に音が前よりも澄んで来て、第4楽章ではピアノ先導の活発な調べにヴァイオリン独奏が続き、様々な変奏が展開されました。ヴァイオリン奏者は疲れも見せず精神を研ぎ澄まし力演、最後渾身の力を込めて一気に高音部に弾き上がり、最後ピアノのアルぺジョで幕を閉じました。この章ではピッツィカートが目立ち、冒頭の4重奏で、その後独奏Vnで、4重奏のVcまた第2Vnでも演奏がありました。

 この曲を聴いた後の印象は、やはり独奏ヴァイオリンの活躍が目立つ曲で、プログラムにも記されている様に“招聘教授ドンスク・カン先生の情熱的ヴァイオリン…”演奏が聴衆の心にも響いた様です。またこれもプログラムにあるのですが“これは私の今までの作品の中で、最高のものである”とショーソンが手紙に書いているそうですが、私の見解では‘ショーソンさん、そうは言ってもやはりあなたのヴァイオリンと管弦楽のための『詩曲 』が群を抜いて有名かつ最高の曲ですよ’と言いたいですね。

 まとめますと、フランス音楽には(日本で)余り知られていない作曲家にいい曲がある事を、例示的な演奏で示されたことの意義は大きいと思います。またさすが日本のトップレベルの教授陣の演奏だけあって4重奏のアンサンブルも呼吸が非常によく合っていて、ピアノ及びヴァイオリンの独奏も大変良い演奏でした。特に最後のヴァイオリンの独奏はヴァイオリンの音が非常に卓越 していて素晴らしく、招聘教授の演奏は音に力もありテクニックも素晴らしく、会場一杯に素晴らしい調べが広がっていました。調べの響きはどちらかと言うと男性らしい太い重厚な音質で、時としては荒々しく時としては穏やかに変幻自在という感じで人を惹きつける演奏でしたが、欲を言えば繊細な音質特に高音の天まで届く輝く絹糸のような音も聞きたかった様な気もします。

 尚、漆原さんの演奏はほんのチョコットしか聞けなかったので、今度独奏会かオケとの協演コンサートがあれば是非聴きに行きたいと思います。